聞こえる音と言えば、緑なす樹々の息づかいと、時折吹き抜けていく風の音のみ・・・
静かな・静かな時の流れの中に、規則正しく耳を打つのは、ポトン、ポタリと水の音。
ここは岡山県阿哲郡大佐町と新見市の境、市倉峠。高梁川源流域にある大井野川の源流である。
岡山県には東から、吉井川、旭川、高梁川と、三つの大きな川の流れがあり、各々が個性を持っている。
その一つ、高梁川の源は、県北、鳥取県との県境中国山地、花見山茗荷谷にある。
先の大井野川が、小阪部川と合流するあたりに、御洞渓谷がある。東に十和田の奥入瀬があるなら、
西の奥入瀬と呼んでも恥じない程の、景観の美しさ、素朴さ、清らかさを持っている。
多くの川の流れを集めて、高梁川は、大きく、逞しく成長しながら、111.5kmもの長さ、
流域面積2670平方キロメートルをもって、岡山県を縦に瀬戸内海へと走り抜けている。
川は人間が自然と力を合わせて、造りあげたものである。その川は、人々と営みを同じくし、
多くの恵みをもたらし、文化を育み、大切なものを人間に与え続けてくれた。
上流域の新見市、中流域の高梁市・総社市、下流域の倉敷市、それぞれの歴史と文化を紡ぎながら、
高梁川と共に生きている。
人間は又、川と大いなる戦いもしてきた。人間が無謀な戦いを挑み、川の怒りを誘ったのかもしれない。
高梁川の源流域より瀬戸内海まで、川の成長を見ながら歩いてみると、流域に暮らす人々の
生き様と共に作られてきた、川の歴史が解る。と同時に、人間が川と共に生きる事の大切さが身に沁みてくる。
河口に広がる水島工業地帯は、人間と川との共存共生により造りあげられた一大成果と
言えるのではないだろうか。人間が川から奪うばかりではなく、与える事の大切さ、川を慈しみ、
幼い頃に遊んだ故郷の川の様に、いつ迄も綺麗な川でいて欲しいと、願いはつきないのである。
因みに、岡山県阿哲郡大佐町には、全国的にも類を見ない、源流振興課が役所内にあり、
隣には源流会館が建って町民に門戸を開いている。源流を、そして川を大切にしているその姿勢が、
とても素晴らしく心地良い。
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