手作り写真の楽しみ
  「和紙に、布に、木の板に・・・・・・」
   
手作り写真の楽しみ
  「和紙に、布に、木の板に・・・・・・」
 
 ● 仕事ではなく、自分たちが楽しむための写真

 皆さんは写真と聞いてどのような言葉を想像するでしょうか。想像してみてください。
 まずカメラ、フィルム、プリント、現像、アルバム、写真屋さん、こんなところでしょうか。
 そして、皆さんが写真を写したとき、ほとんどの方が、家の近くにあるDPEやコンビニなどで、
写し済みのフィルムを出し、出来上がった写真をアルバムに貼って「おしまい」―こんな感じではないでしょうか。
 一口に「カメラ」と言っても、プロ用からコンパクトカメラ、レンズ付きフィルムという使い捨ての
カメラまで、いろいろなカメラがあります。フィルムにしても、200種類以上売られています。
これだけ色々ある機材、材料から、仕事ではそのときどき必要な物を選び、撮影に出かけていきます。
 そして今、カメラとフィルムさえあれば誰もが写真を取ることができる時代です。しかし、写真が
世に出てきた頃は、フィルムや印画紙は自分たちの手で作っていたのです。
 今から、7,8年前になりますが、私の父(建築写真家・畑 亮)が、府中郷土の森で写真展を行った時に、
ただ写真を展示するだけでなく何かしたいと始めたのが「手作り写真」「自分で印画紙を作る」でした。
というのも、「原点に帰ってみる」との考えがあったからでした。また、仕事ではない写真、
自分たちが楽しむための写真として始めたのです。
 自分たちが楽しみながら作った作品は、観てくださる方たちにもこの思いが伝わったのか、東京、石川県、
岡山県にて、父、私、弟の三人で「手作り写真三人展」を開くことになり、非常に好評を博したのでした。

 ●印画紙の絵が消えてしまった!

 手作り写真をつくるには、紙と感光乳剤が必要です。感光乳剤を自分で作ることもできるのですが、
市販の感光乳剤を使いました。その代わり印画紙の素材を色々試してみました。和紙、油絵のキャンバス、
画用紙、金属板、布、木の板、プラスティックの板など、それぞれ試していくうちに、絵柄や素材に
向き不向きがあることもわかりました。
 岡山県の展覧会後、手作り写真の手法を教えてもらえないかとの問い合わせが地元の方々からあり、
父と検討した結果、この依頼を受けることにしました。
 しかし、ここからが大変でした。まず、暗室、引き伸ばし機を用意してもらわなければなりません。
参加者それぞれに自分が撮影した写真のフィルムも用意してもらわなければなりません。また、印画紙を
作るところから始めると、写真が出来上がるまでどんなに早くても四日かかってしまいました。そこで、
事前に東京で印画紙を作っていくことにしました。あとは、こまごまとした物を当方で用意して、いざ講習会に
挑んだんです。とんだハプニングが起きるとも知らずに・・・・・・。
 講習会当日、参加者を二グループに分け、暗室と用意してもらった屋根裏部屋に入り作業を始めました。
それまで暗室に入ったことのない人ばかりですから、多少の失敗は覚悟していました。それでも、何とか
順調に進み、薬品処理をし終えて水洗処理していたときです。印画紙に映し出されていた絵が、
段々とぼやけだし、最後には消えてしまったのです。この時ほど焦ったことはありません。
なんと、汗のしたたる真夏の屋根裏部屋を暗室にしたため、水洗処理の水温が上がりすぎ、紙に
塗ってあった乳剤が溶けてしまったのでした。
 こんなアクシデントもありましたが、うれしかったのは、参加してくださった皆さんに、写真の
楽しさを経験してもらえたことでした。

 ●カメラも手作り「ピンポラカメラ」

 そしてこの夏は、印画紙だけにとどまらず、「カメラも手作りで」ということになり、長野県大平宿で
ピンホールカメラの作り方を教えることになりました。伝統的民家の連なる大平宿の維持再生を考える
「生活文化同人」(代表・吉田桂二)主催の大平建築塾の講座です。
 今回は暗室の用意ができないとのことでしたので、その場で写真が見られるようにポラロイドを使いました。
「誰もが簡単につくれるように」―これが結構むずかしかったのですが、今回はさほどのアクシデントもなく
参加者全員が無事に撮影できました。
 出来上がったカメラに「ピンポラカメラ」と名づけ、自分で作ったカメラで自分で作った印画紙を使う。
これを今後のテーマにして、手作り写真を完成させたいと思っています。
 またこのような機会があれば、多くの方々に写真の楽しさを知ってもらいたいと思っていますので、
ぜひお声をかけて下さい。

                 1999年 現代農業11月増刊号 『田園工芸』(農文協)に掲載  文:畑 耕